イギリスにはケーブルカー(funicular)が16路線あります (“AN ILLUSTRATED GUIDE TI THE FUNICULAR RAILWAYS OF GRATE BRITAIN”による)。日本だと比較的山間部で、山を上り下りするために使われる印象がありますが、イギリスでは海岸沿いに切り立った崖のある地形が多くみられ、ほとんどのケーブルカーもそのような海沿いに見られます。うち13路線は通常の電気モータを動力とするケーブルカーなのに対し、3路線は水を動力としています。すなわち、上部駅では車両の水タンクに水を積むことで重量を増加させて下るための動力とし、下部駅で水を抜いて軽くします。ケーブルカーは一般的につるべ式で2台の車両が交互に上下しますので、常に下る側の車両を水の重量分だけ重くして、行き来する仕組みとなっています。3路線のうちの一つ、Devon地方北岸にあるLynton & Lynmouth Cliff Railwayに乗りに行ってみました。
Lynton
Devonを旅行していた2022.04.17、車でLyntonに向かいました。ケーブルカーの上部駅と下部駅、どちらから乗る選択肢もあるのですが、地図で調べた限りでは上部駅近くに大きな駐車場があって、上部駅の方が車でのアクセスがしやすそうでした。駐車場に車を停め、高低差のある道を歩いていきます。


駅までの道の途中、海岸を見下ろす光景に出会いました。なかなかのスケール感です。

ほどなくたどり着いた上部駅に、緑色の車両が停まっていました。ケーブルカーというよりは小屋といったほうがしっくりくる素朴な造作です。Lynton & Lynmoth Cliff Railwayが開業したのは1890年ということで、130年以上の歴史があります。(下の2枚の写真は帰路に撮影したもの)


片道£3.30を支払って、車両に乗り込みます。車内はやはり木造小屋の室内のようであり、下り方はオープンデッキになっていて開放感があります。


単線ではなく複線で、それぞれの車両に専用のレールがあてがわれていますが、そのままではすれ違う時に支障があるらしく中間部で若干外に膨らんでおり、それでいてケーブル自体は直線を貫いているのが面白いです。

オープンデッキにブレーキ操作の係員が乗り込み、ケーブルカーは静かに出発しました。
勾配は1:1.75ということで、角度でいうと約30°です。直線状に急勾配を下るイメージは、斜行エレベータに近いかもしれません。
Lynmouth
途中2本の道路橋の下をくぐり、1分ほどで下部駅に到着しました。リン川の河口にあるLynmouthという街になります。



Lynmouthの街を少し歩いてみました。有名な観光地というわけではありませんが、ちょっとしたお土産屋さんやカフェがありました。

リン川に沿って長手方向に道路と街が広がります。なんとなく有馬温泉の街を思い出しました。全然違いますけどね。


川の分岐です。右側が河口で、左下に伸びるのがイースト・リン川、分岐して橋をくぐるのがウェスト・リン川です。ケーブルカーの動力源である水は、ウェスト・リン川の上流で分岐したものを使っているそうです。冒頭、イギリスには水を動力源とするケーブルカーが3路線あると書きましたが、純粋に水の重力だけを利用している(つまり使い捨て)なのはLynton & Lynmouth Cliff Railwayのみで、ほかは水をポンプで循環させているそうです。

再度ケーブルカーに乗り込み、上部駅に戻ってカフェで一息つきました。お土産も少しばかり売っていて、Lynton & Lynmouth Cliff Railwayのミニチュア看板やイギリス国内のケーブルカーガイドブック、ポストカードを購入しました。看板のデザイン、”LYNTON & LYNMOUTH”という文字と”CLIFF RAILWAY”という文字が真ん中で離れているのは、ケーブルカーの複線線路を模しているのかも知れませんね。


車両はまた、観光客を乗せて下っていきました。




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