GWRの Class800/802 その3 走行中のモード切替

United Kingdom

Class800/802はバイモード車両ですので、電化区間で直接モータを回して走行するモードと、非電化区間でエンジン発電機から発電した電気でモータを回して走行するモードとを使い分けることができます。営業区間のうちLondon Paddington寄りは電化されていますが、次第に枝分かれするルートのうち最後まで電化されているのはCardiffくらいで、ほとんどの列車が非電化区間へ直通運転を行なっていることになります。

データイムに毎時二本走っている、London Paddington~Oxford系統もそのひとつで、Great Western Main LineからOxfordに分岐するDidcot Parkwayから先が非電化区間となります。本数の多いDidcot Parkway~Oxford間の電化計画も過去にあったようで、Didcot Parkwayから隣のAppleford手前までの線路沿いには架線柱のみ建てられているのですが、架線はもちろんビームも設置されておらず、道半ばで放置されています(架線柱のみ建てられる、というのはどのような予算の取り方だったんでしょうね?)。ちなみにいまはOxford駅が線増を伴う大規模改築中で、CambridgeまでのEast West Railも開通する予定でもあり、これを機にOxfordまで電化しちゃったほうがすっきりすると思うのですが、資金の調達に厳しいのはどこの国も同じようです。イギリスの鉄道は多くが道路と立体交差しており(私の2年半の生活で踏切を見たことがない)、電化のためには立体交差部の路盤下げ等、想像以上に費用がかかるのかも知れません。

このOxford系統のうち、およそ半数が分岐駅であるDidcot Parkwayを通過します。同駅にはホームを経由せずに大半径のカーブでショートカットする複線の短絡線があり、通過列車はそちらを通過していきます。下の地図で、右下から左方向へ直線で伸びるのが、電化されているGreat Western Main Line、右下から上方向に緩やかなカーブを描いているのが短絡線です。

モード切替地点

London PaddingtonからやってきたOxford方面へのClass800/802の列車がDidcot Parkwayから非電化区間に入る際、Didcot Parkway停車列車の場合は停車中にモード切替が行なわれます(逆方向も同じ)。すなわち、エンジン始動、パンタ下げの光景をホームから見ることができます(逆方向はエンジン停止、パンタ上げ)。営業運転中にパンタ上げ下げというのはイギリスでは珍しくなく、ロンドンではおおまかに言ってテムズ川北側がAC25kV電化、テムズ川南側がDC750V第三軌条電化という歴史的経緯があり、南北を直通する電車は切り替え駅でパンタ上げ下げを行ないます。

それでは、Didcot Parkway通過列車の場合は、どこでモード切替を行なうのかという点が気になります。日本的に考えると、一つ手前の停車駅であるReadingでエンジンモードに切り替え、Didcot Parkwayまでは架線下DCとして走行、そのままOxford方面に分岐するというオペレーションが自然かと思います。ところが実際には、このモード切替はReadingから走ってきてDidcot Parkwayの手前までやってきたところで、走行中に実施されます。電車として走りながらエンジン始動、パンタ下げが行なわれるのです(逆方向も同じく走行中にパンタ上げ、エンジン停止される)。本線⇔短絡線への転線があるため走行スピードは落ちることが多いですが、おそらくモード切替自体に走行速度は関係なく、160km/h程度で行なわれているのではないかと思います。

以下の動画は、London PaddingtonからOxfordを経てHerefordに至る列車の前面展望です。かなり詳細な説明が要所要所で付加されおり、Didcot Parkwayの1駅手前のCholseyを通過したモード切替点では以下のような記述を見ることができます。(34:20あたり)

The line to Oxford isn’t yet electrified, so the train changes here from ‘Electric’ to ‘Diesel’ mode, which automatically lowers the pantograph and starts the three diesel engines on the train.
The official location for the changeover is a little further ahead, but most drivers change here to avoid also having to deal with restrictive signal aspects as we approach Didcot.

実際に走行中にパンタを上げ下げするところを外から見てみたいと思い、沿線に出かけてみました。

Sands Road – 2022. 2. 26

おおよその場所の見当はついていたので、線路を見下ろすことができるSands Roadとの立体交差に行ってみました。

橋の北詰から東南を望んだLondon Paddington方向に切替地点があります。

複々線のうち、奥が本線、手前が緩行線

何本か列車を観察したのですが、切替地点までは遠く、ここからパンタの上げ下げを見ることはできませんでした。

Cholsey近くの農道 – 2024. 1. 20

約2年後に、Sands RoadからもっとCholsey寄りの農道との立体交差にも行ってみましたが、ここも不発に終わりました。切替地点はSands Roadとこの農道の間にあり、残念ながら付近の公道から視認できるところはない、というのが私の結論となりました。

列車に乗ってモード切替を観察

Oxford方面とLondon Paddingtonを結ぶ列車に乗るたびにモード切替を観察しました。といっても車内から分かる情報は限られており、M車に乗ればエンジン音とモータ音が聞こえますが、パンんタの上げ下げまではなかなか分かりません。いちおう、以下の動画に3パターンの様子をまとめてみました。

① Oxford → London Paddington行き 2024. 3. 9

M車に乗車し、エンジン音、モータ音のタイミングから、DCモード→ECモードへの切替を推測

② London Paddington → Oxford方面行き 2024. 2. 29

M車に乗車し、エンジン音、モータ音のタイミングから、ECモード→DCモードへの切替を推測

(減速時にブレーキをかけながらモード切替をしているとは考えにくいので、電化区間を走行している動画の冒頭のほうで、すでにDCモードに切り替わっている可能性が高い)

③ Oxford → London Paddington行き 2024. 3. 23

たまたま晴天の朝に先頭T車に乗車した際、列車の影からパンタ下げからパンタ上げに変わっていることを記録したもの。(残念ながら、上昇のタイミングは捉えられませんでした)

その他

Class800が走行中にパンタを上げている様子を収めた動画として、以下がYoutubeにアップされています。量産先行車の試験中で、Readingを出発直後の低速のタイミングです。詳細不明ですが、面白い動画だと思います。

Class800/802が走行中にモード切替を行なっていることに気付いてからしばらくの間、Bi-mode車両の導入によってこのような運用が始まったのだと思っていたのですが、よく考えるとイギリスには偉大な先例がありました。

ユーロスターが1994年に運転開始して以降2007年のHS1開業までの間、イギリス国内はDC750V第三軌条で運転されていました。当時、DC750VとAshford以南のAC25kVとの電源切替が走行中に行なわれいて、パンタも走行中に昇降していたようです。その動画もYoutube上にありました。

日本の列車だと、例えば直流~交流区間を直通する列車、もしくは剛体架線区間に直通する列車で使用するパンタグラフの個数を変える場合も、必ず前後の停車駅で停車中に昇降操作されると思います。しかしイギリスでは昔から、走行中のパンタ昇降は普通に行なわれてきたのですね。

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