Nottinghamはイングランド中部のやや東よりに位置し、30km余りの路面電車ネットワークを有する中規模の都市です。過去にも路面電車が走っていたことはあるようですが、現在のネットワークは2004年以降に整備された新しいもので、当初から近代的な低床車が導入されてきました。2タイプある車両のうち、開通時から走っているのが「インチェントロ」といわれるADトランツのシリーズです。
日本で初めての本格的な低床車が1997年の熊本市交通局9700形(ブレーメン形)で、それを岡山電気軌道が9200形(MOMO)として2002年に導入する際に、足回りはそのまま車体デザインを「インチェントロ」に変更したということです。以降、富山ライトレールや万葉線等、新しい時代のLRTのデザインとして広まっていき、日本ではとても馴染みのあるデザインとなりました。Nottinghamのインチェントロも2002~2003年にかけて製造されたということで、MOMOと同世代といえるかも知れません。写真を並べてみましたが、もとのインチェントロよりもMOMOのほうが洗練されて見えますね。MOMOのもとになったのは、NottinghamではなくフランスのNantesのほうかも知れません。



そんなインチェントロに乗ってみたく、2022年2月にNottinghamへ向かいました。

Phoenix Park – Clifton South
Nottinghamの路面電車ネットワークは”NET (Nottingham Express Transit)”と呼ばれています。市街地や、Network RailのNottingham駅を南北に串刺しするように路線が伸びており、南と北とでそれぞれ二股に分かれています。北半分が2004年に開業した当初の路線、南半分が2014年に延伸した路線だそうです。また、終点をはじめ要所要所にP+R(Park and Ride)の大規模駐車場が設けられていて、市街地への車の乗り入れを抑制するというNETの目的をはっきりとうかがい知ることができます。2022.02.05、そんな大規模駐車場の一つであるPhoenix Parkまで、Oxfordから車でやってきました。途中のM1で、ほかの車同士の衝突事故が目の前で起き、私は巻き込まれずに済んだものの緊張を強いられる運転が続いてきたので、駐車場に車を停めてようやく一息つきました。P+Rなので、NETの停留場は目の前にあります。早速、インチェントロの姿を目にすることができました。


南北でそれぞれ二股に分かれているNET、北側のPhoenix Parkからの系統は南側ではClifton Southまでを結んでいます。まずはその系統を乗り通してClifton Southに向かいました。約45分の旅です。


Clifton SouthもやはりP+Rの拠点で、巨大な駐車場に囲まれる形でループ式ではなく頭端式のホームが配置されています。再びPhoenix Parkに戻るインチェントロを見送り、一本あとの列車で北方向へ戻ることにしました。




やってきたのはインチェントロの後継として2014年の延伸時に導入されたCitadis302です。

Network Railとの乗換駅であるNottingham駅までいったん戻ります。Nottingham駅はNational Railの駅を一跨ぎする形(オーバークロス)で設置されており、乗り換えには便利です。ただ、イギリスの鉄道駅は基本的に改札口があるため、大陸の鉄道で見られるように、路面電車のホームから直接鉄道線の各ホームに乗り降りできるような構造にはなっていません。



Toton Lane – Hucknall
折り返して、もう一つの南側の終点駅であるToton Laneを目指すことにしました。Clifton Southへ向かう路線が主に住宅街を抜けていくのに対し、Toton Laneへの路線はノッティンガム大学やメディカルセンターといった産学が集まる一帯を縫うように走ります。併用軌道と専用軌道を右へ左へ何度も方向を変えながら、窮屈そうに進んでいきます。終点のToton Laneはやはり大規模な駐車場に挟まれた立地で、さきほどのClifton Southと似た雰囲気の駅でした。

みたびNottingham駅に戻り、ここで鉄道線に乗り換えてNETのもう一つの終点である北側のHucknallを目指します。EMR (East Midlands Railway)のclass170です。


鉄道線のHucknall駅はNETと隣接しており、そのまま乗り換えることができます。ちょうど停車していたCitadisに乗り込みました。

鉄道線と隣接しているのはHucknallだけというわけではなく、NETの車庫があるWilkinson Streetまでは線路が並走しています。鉄道敷の一部をNETに転用(もしくは線増)したのかも知れません。Phonenix Parkからの路線と合流するHighbury ValeでNET完乗となりましたが、そのまま乗車し、Wilkinson Streetの一つ手前のBasfordで下車します。あいにくの雨模様ですが、走行するインチェントロとCitadisの写真を撮ったりしました。




車を取りにPhoenix Parkへ戻る途中、分岐駅のHighbury Valeでも下車してみました。


全線乗りつぶして約3時間半ぶりにPhoenix Valeに到着、その後ガソリンを入れたりスーパーで晩ごはんを買ったりして、夜はノッティンガム大学の敷地内にあるホテルに泊まりました。
Wilkinson Street – The Forest
翌日の2022.02.06、北側区間のうち市街地寄りの区間をゆっくり楽しもうと思います。車庫のあるWiliknson StreetもP+Rになっていて、今日はここの駐車場に車を置くことにしました。Park and Rideのシステムは旅行者にとっても便利なシステムであることに気づきました。入出庫線を跨いで駐車場に入ります。


車両は2種類だけなので単調ですが、間近で車両を見ることができて楽しいです。




Wilkinson StreetからNottingham方面の列車に乗り、High Schoolという坂の上の停留場で下車しました。ここからThe Forest方面にかけての坂を登るインチェントロの写真がJTBキャンブックスの「世界のLRT」に掲載されていたのが印象的で、ぜひ訪問したいと思っていました。
場所はここなのですが、コンデジの望遠の倍率がそれほど高くないためか、思ったような写真にはなりませんでした。難しいですね。



The ForestにもP+Rの駐車場があります。駅周辺の路面は、線路なのか道路なのか歩道なのかよく分かりません。ホームは坂の途中にあり、そこそこの傾斜が付いています。


The ForestとWilkinson Streetの間は道幅が狭いためか、上下線がそれぞれ別のルートを通る単線区間となっています。もとの道路の通行方向に合わせたためか、両駅を出たところで上下線がクロスし、反時計回りの進行方向を取ります。






Old Market Square – Royal Centre
もう少し街中にも行ってみました。Old Market Squareです。いわゆる旧市街地の中心部といった感じの場所かと思います。


Royal Centreとの間の坂でも写真を狙ってみました。街じゅう坂だらけです。



長い路線を行ったり来たり、満喫したのでWilkinson Streetの駐車場に戻り、車を拾いました。そろそろ洗車した方がよさそうです。

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