交流電化に転換したUetliberg鉄道

Zurich

Zurich中央駅から西南の方角にあるUetliberg山に向けて、山を登っていくUetlibergbahnという路線があります。運行しているのはSZU(Sihltal Zürich Uetliberg Bahn)という私鉄で、路線番号はS10です。会社名が示すように、もう1つSihltalbahnという路線があるのですが、Uetlibergbahnが直流1,200V電化、Sihltalbahn交流15kV電化と2路線で電化方式が異なっていました。両路線が線路を共用するZurich中央駅~Giesshübel駅間で2種類の架空集電方式を共存させるために、直流の架空線がオフセットして配置され、Uetlibergbahnの車両もパンタが車体中心からずれて搭載されているという珍しい光景がみられました。2022年にUetlibergbahnのほうが合わせる形で交流電化に転換しており、この特殊な状況も解消しています。

1997.08.08の訪問

この日はスイス鉄道150周年行事がZurich中央駅で行なわれており、その訪問に合わせて初めてUetlibergbahnにも乗車しました。地下ホームに停車しているのはBe 8/8です。上部には剛体架線が2本見えますが、左側が交流、右側が直流です。

山を登った終点のUetlibergです。ここは直流のみの区間なのでオフセットした位置に1本の架線があり、停車しているBe 4/4 IIの車体側面からもはみ出るようにパンタグラフが設置されていることが分かります。

2022.06.04の訪問

25年ぶりにUetlibergbahnに乗車することにしました。この日はBremgartenの宿に一旦チェックインをしてからZurichの街まで出てきました。車両は2014年に運行が開始された新しいBe510に置き換わっています。前パンなので、パンタグラフがオフセットしている様子がよく分かります。

Bremgartenの宿に戻る時間を考えると終点のUetlibergまで行く余裕がなかったので、途中のTriemliまで乗って列車を降りました。

駅には工事運休の案内がありました。訪問したこの期間も平日は工事運休だったようで、当日はたまたま土曜日だったため列車に乗ることができました。なんの工事か気に留めることもなくこの日は過ごしていたのですが、これがまさに直流電化から交流電化に転換するための工事だったことを後日知ることになります。

帰りの列車がやってきたのでZurich中央駅まで戻りました。

数か月経ち、TODAY’S RAILWAYS EUROPE 2022年10月号を読んでいたところ、Uetlibergbahnの交流化の記事を見つけました。2022.07.26の夜に最後の直流列車が走行、08.22より交流による運転が開始、直流電車は解体されるとの内容でした。実は最新のBe511は当初から直流1,200Vと交流15kVの複電圧仕様となっており、パンタグラフも直流のオフセット位置から交流のセンター位置にスライドさせることができるそうです。確かに写真をよく確認すると、パンタ台のところにレールやケーブルベアのようなものが見えますね。10年以上前のBe511新製時には交流化の構想があったということでしょうか。ですので、交流化で廃車となったのはBe 4/4 IIということになります。

2024.03.28の訪問

Zurichで時間があったので、交流転換後のUetlibergbahnに乗ってみました。例によってZurich中央駅の地下ホームに行くと、変わらずBe511が待っていました。天井の剛体架線は交流の1本のみとなっています。

路線はこの日も工事中ということで、たまたま前回降りたのと同じTriemli折り返しとなっていました。Triemliホームに降りて上を見上げると、確かにパンタグラフの位置が車体センターに移動しており、架線の位置も前回とは異なります。趣味的には面白い光景が見られなくなってしまい残念ですが、運行する側からするとより効率的なオペレーションができることになったのだと思います。

下の写真は左が直流電化時代、右が交流転換後です。架線柱は流用、ビームを交換したようですね。

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