Zurichには、路面電車の路線網を活用した粗大ごみ収集トラムが走っています。コンテナを積載した貨車を電動車がけん引し、毎日日替わりで市内11か所の収集場所まで走行していきます。純粋な粗大ごみを収集するトラムが”Cargo-Tram”、家電製品を収集するトラムが”E-Tram”と呼ばれていますが、看板が異なるだけで同じ車両が使われています。牽引車はXe4/4 1922号で、もとはBe4/4という旅客車だったものが1980年代初頭にXe4/4という除雪用の事業用車に改造され、さらに2003年にはCargo-Tramに転用されたという経緯があります。
そのコンセプトと外観に惹かれて私も10年以上前に模型化したことがあったのですが、当時は現物を見る機会がなく、ネット上の情報を集めて製作するしかありませんでした。いつか実際の車両を見てみたいと思っていたところ、2024.03.28にようやく機会を得ることができました。”Cargo-Tram”(もしくは”E-Tram”)が運行されているかどうかは、Web上に公開されている年間スケジュールで調べることができます。私がZurichを訪問した2024.03.28は”E-Tram”の運行日であり、収集場所は北部にある”Seebach”だということが分かりました。

Werdhölzli
当日はLondon Gatwickを7:50に出発してZurich国際空港に着いたのが10:30、E-Tramの収集時間は15時からなのでまだ時間があります。出庫前であれば実車を見られるかも知れないと思い、E-Tramの車庫(基地)でもあるリサイクルセンターが位置するWerdhölzliに行ってみることにしました。Zurich中央駅から17系統に乗車して終点のWerdhölzliへ向かいます。

12:10、Zurich中央駅から約20分でWerdhölzliに到着、ループ線のホームに終着します。ループ線に合流するようにリサイクルセンターからの線路がつながっており、その先にE-Tramが停車しているのを見つけました。

ちょうど門が開いていたので、車両をのぞき見します。牽引車である1922が2両の貨車を従えて停車しているところでした。貨車は手前が二軸車、奥がボギー車で、それぞれ1984、1991という車番が書かれており、積載しているコンテナの種類も異なるようです。

Cargo-Tram/E-Tram用のものか分かりませんが、リサイクルセンターの敷地には他にもコンテナが置かれていました。ごみの種類によって使い分けるのでしょうか。

ループ線との位置関係は次の写真のようになっています。リサイクルセンターからループ線にはそのままの向きで出庫することができますが、入庫するときはバック運転になるのでしょうね。ちなみに本線からループ線に入るときに上下線がクロスしているため、珍しく時計回りのループとなっています。


ホームに停まっているCobraの写真を撮ったりしていると、ちょうどリサイクルセンターからE-Tramが出庫してくることに気づきました。


私がこのタイミングを狙っていたわけではなく、Zurich中央駅からの17系統がたまたまこの時間にWerdhölzliに着いただけでしたので、出庫の様子を見ることができたのはとてもラッキーでした。さっきは貨車2両がつながっているように見えましたが、実際に連結されていたのは手前の二軸車1両のみでした。ゆっくり観察する間もなく、E-TramはWerdhölzliを後にして走り去っていきました。

Seebach
すぐにでも後を追いたかったのですが、次の17系統が発車したときにはE-Tramが出庫してから10分が経っていました。E-Tramが行った先は本日の収集場所のSeebachでしょうから、私も後を追っていったん17系統でZurich中央駅に戻り、そこで14系統に乗り換えて北の終点のSeebachへ向かいました。新型のFlexity Be6/8を乗り継ぎます。


45分ほどかけてたどり着いたSeebachにはE-Tramの姿はありませんでした。まだ13時過ぎで、収集開始の15時には確かに早い時間です。追いかけていたはずのE-Tramはどこへ行ってしまったのでしょうか。職員がどこかで昼食を取るために休憩しているのかも、と思ったりします。ここで15時まで待ち続けるのもつらいので、一旦Zurich中央駅方面まで戻ることとします。戻る途中でもE-Tramとすれ違うことはありませんでした。
Stampfenbachplatz近くのホテルにチェックインし、身軽になって再びSeebachを訪問していました。2本あるホームのうち片側に、E-Tramは停車していました。Werdhölzliで見送った時のまま、貨車を1両従えた姿です。

貨車に積載されたコンテナは側面が開放されており、住民が家電製品を持ち込んでいるところでした。


収集時間が終わるのは夜の19時です。それまでE-Tramが動くことはないため走行するシーンを目にすることはできないわけですが、代わりに車両を観察することにしました。次に模型化することがあれば、その資料にしたいと思います。
まずは牽引車前面を正面から見ます。旅客車時代は路面電車らしくもっとオーバーハングがあったようですが、事業用車に改造された際にばっさりと切り落とされています。

雪かき機を取り付けるための座と、雪かき機の操作用ケーブルを接続するカラフルなプラグです。

扉のない側の側面です。



E-Tramの看板は、掛け替えられるようになっていました。”Cargo-Tram”用の看板もあるのでしょう。

連結器は、路面電車でよくみられるトーバーではなく、ピン式の密着連結器?が使われています。

扉がある側の側面です。



続いて貨車です。あくまで下回りとコンテナは別体のようで、ローダーで積み下ろしできるようにコンテナにはフックとローラーが設置されていました。



最後に、営業列車のCobraと並ぶ姿を写真に収めてから、Seebachを後にしました。


ごみ収集スケジュール以外、運行ダイヤが公開されているわけではなく、よそ者には謎が多いCargo-Tram/E-Tramですが、今回は出庫や収集の様子を目にすることができ、貴重な機会となりました。これからも長く走ってほしいと思います。


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