Rotterdamを走った狭軌鉄道

Netherland

前回の続きです。オランダ南西部のロッテルダム近郊には、いくつもの三角州や島がみられます。1966年ごろまで、それら地域の交通手段として235kmもの路線網(外部リンク)を擁していたのがRTM(Rotterdamsche Tramweg Maatschappij)と呼ばれる狭軌鉄道です。ヨーロッパでは珍しい1067mmゲージが採用されていたほか、そこで走っていたディーゼルカーは独特な外観をしており、私もかねて興味を持っていました。RTMで活躍した車両は現在”RTM Trammuseum in Ouddorp”という博物館に動態保存されており、見に行くことにしました。

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RTM Trammuseum in Ouddorp

2023.04.10、ハーグにあるエッシャー美術館を後にしてクルマで”RTM Trammuseum in Ouddorp”に向かいます。約1時間のドライブです。博物館では15:30の体験乗車を予約していて、それまで時間に余裕があったので寄り道も考えたのですが、雨脚が強くなってきたため博物館に直行します。Ouddorpは”Goeree‑Overflakkee”という三角州の島の先端にある町で、博物館の周囲は防風林に囲まれた立地となっています。

駐車場から小走りで、受付やカフェのある建物に向かいます。

“Retourrit Tram met Museum bezoek(往復トラム+博物館見学)”という体験乗車はすでにネットで事前予約、13.00€を支払ってあったので、受付だけして切符を受け取りました。

発車までまだ1時間半近くあるので、保存されている車両をゆっくりと見学することにします。受付やカフェのあるこの建物には小型の貨車や模型が展示されていました。

模型には、列車を載せる船も再現されていました。島と島とを結ぶ航送もあったのですね。

外に出てみました。体験乗車のための駅にはホームといくつもの留置線があり、その中にお目当ての独特な顔をしたディーゼルカーが停車しているのが見えました。

M.1602

1950年にRTMで製造された電気式ディーゼルカーです。前身はZVTM(Zeeuwsch-Vlaamsche Tramweg- Maatschappij)のME16とのことです。前面おでこと下部の装飾が独特で面白いですね。愛称は”Reiger(サギ)”です。(参考

1805

M69というディーゼル機関車を近代化改造した車両です。M69は後述のM67と同型車のようなので、だとすると近代化改造前後で全く外観が異なるのですね。愛称は”Meeuw(カモメ)”です。(参考

M.1804

AB315として1924年に製造、1953年に鋼体化、機械式ディーゼルカーに改造され1804となりました。外観は前述のM.1602に似ていますが、M.1602の新製に近い時期にM.1804が更新されたため、車体形状が似たものと推察します。愛称は”Kievit(タゲリ:チドリの仲間)”です。(参考参考

17.01 + M17.00 + 17.02

17.01
M17.00
17.02

これは訪問後に知ったのですが、かなり特殊な経歴の3両組であることが分かりました。

17.01と17.02の製造は1954年、いわゆるデュワグカーのET195.01/ET195.02として、ドイツ南部、フリードリヒスハーフェンに近い””Ravensburg–Weingarten–Baienfurt 線”に路面電車として導入されました。同線はメーターゲージ、750V電化となっています。しかし、わずか5年後の1959年に同線は廃止、同じ時期に前述の1804と同型の1801″Sperwer(ハイタカ)”が事故廃車となる等、車両不足だったRTMが1961年に購入することとなります。

RTMは非電化路線ということで大きく改造されるのですが、2両をディーゼル化するという手法ではなく、発電機車を新造して2両に電気を供給する、という方法がとられました。両運転台の単行車だったET195.01とET195.02はそれぞれ片運化され、乗降ドアも片側から両側に増設されます。もちろんパンタは撤去、モーターが流用された動力台車は運転台から遠い側とされました。改軌もされているはずなのですが、記録は見つけられませんでした。発電機車のM17.00は、車体流用名目でRTMにてほぼ新造されたようです。意匠はデュワグカーに似せてあり、両端の運転台は片運化された17.01と17.02から流用されました。ただしM17.00自体はモーターを積んでいないため自走できず、17.01もしくは17.02と編成された状態でなければなりません。愛称は1801の”Sperwer”を引き継いだようです。

これだけでも特殊な経歴といえるところ、1966年にRTMが廃止となった後、1967年になんとオーストリアのZillertalbahn(ツィラータール鉄道)に売却されました。ツィラータール鉄道は蒸気機関車の保存運転がされていることで日本でも有名ですが、なにより760mmの特殊狭軌です。転用にあたっては当然再度の改軌が行なわれ、モーターもウィーン市電の発生品に換装されたそうです。3両はVT1という形式名称となり、やはり3両一組で1970年に運転開始しました。

結局、このツィラータール鉄道時代が最も同車が長く活躍した期間となり、その間に運転台等の大規模更新も行なわれたようです。1999年になってツィラータール鉄道で廃車、RTM博物館が買い戻す形となり、オランダに戻ってきました。ここで3度目の改軌を受け、1067mmとなって動態保存に至っています。17.01と17.02はオリジナルの台車、17.00はツィラータール時代の台車だそうです。(参考:R.T.M. OUDDORP, “DE TRAM KOERIER”, October. 2003)

M67

かなり強烈な見た目の木造車です。1949年に製造、1966年に廃車、1998年から修復工事がなされ現在に至ります。

乗車をあきらめる

15:30からの体験乗車、プログラム名に”tram”とあったので、ユニークな外観のディーゼルカーのどれかに乗車できるのかと、勝手に思い込んでいました。ところが、1本前の列車が14:30に戻ってきたのを待ち構えていると、ディーゼルカーではなくSL牽引の客車列車でした。

発車時刻の15:30間際まで待ったもののディーゼルカーが動く気配はなく、ホームに据え付けられて準備しているのはSL列車のみであり、勘違いを確信した次第です。

チケットは既に支払っていますし、SLがつまらないというわけでもなかったのですが、今日はこのあとベルギーのDe Haanまで行かねばならず、その移動時間を考慮すると早めにOuddorpを出発したかったこともあり、結局体験乗車は諦めて博物館をあとにすることにしました。いつか、ディーゼルカーの体験乗車に再訪したいものです。

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