前回の続きです。ご縁があって”ASVi museum”を訪問することになりました。ASVi museumはベルギー中南部、シャルルロワの近郊チュワン(Thuin)にある、メーターゲージの保存鉄道博物館です。私も知らなかったのですが、ベルギーにはかつて5,000kmものメーターゲージ路線網があり、現在は200km程度しか残っていないのですが(それでも長い)、メーターゲージで活躍した小型車両を集めた、動態展示の博物館となっています。
日本にいる私の模型仲間の方がASVi museumの方と知り合いで、今回紹介していただき、訪問することにしました。博物館は一般公開されているので、通常のビジターとして訪れることももちろん可能です。
ASVi museum
2023.04.08, 11時頃に訪問します、ということで博物館のEricさんに連絡をしていました。エントランスで5.00€の入場料を払い、Ericさんを呼んでいただきます。

ASVi museumはボランティアが保存活動を担っており、Ericさんもその一人です。今回初対面でお会いしたもののノーアイデアで、「どうしてほしい?」と聞かれたので、私も空気を読まずに保存車両の説明をお願いしたところ、1両1両の歴史を詳しく教えていただくことになりました。
数も膨大ですし私も予備知識を殆ど持ち合わせておらず、残念ながら教えていただいたことを記憶するに至らなかったので、撮影した写真を並べておきます。
A.1484

2軸客車、A.1484の車内です。
A.11501


2軸客車、A.11501の車内です。クロスシートとロングシートで車内が分かれています。

保存される前の状態の写真も掲示されていました。野ざらしで朽ちかけ寸前だったように見えます。これを修復するために、大変な労力がかかったのでしょう。
A.1853



ボギー客車のA.1853です。中央にデッキがあり、車内は1等と2等に部屋が分かれています。車端には荷物置き場がありました。
9924

2軸路面電車の9924です。私も詳しくないのですが、いわゆるベルギー顔の路面電車ですね。シャルルロワを走っていたようです。
HL.303




蒸気機関車のHL.303です。路面蒸気機関車であり、事故防止のために足回りにはカバーがかかり、ボイラー含め車体全長にわたって上屋があるなど、いわゆるSLとは思えない独特の形態です。
ART.300


2軸気動車のART.300です。旅客輸送のほか、牽引車としても使われていたようですね。いまは何やら車内で作業中でした。
構内を移動
博物館から庫外へ
上記、最後の2両のHL.303とART.300は連結された状態でした。構内移動に同乗できるということで、HL.303のデッキに乗せていただきます。



HL.303を先頭にして、博物館のある建屋から出庫します。路面蒸気機関車であるHL.303の火は落とされており、後ろに続く気動車のART.300が押している格好です。前方監視のためHL.303の前方デッキにはEricさんが乗車しています(上の写真左2枚)。正面に見えている建物は、隣接する作業場(Workshop)です。線路はやがて本線に合流します。
本線に合流すると向きを変え、それまで進んできたレールを左に見ながらART.300を先頭に本線上を後退していきます(上の写真右)。



博物館の建物を左に、その脇の本線を抜けていきます。しばらくして停車、再び進行方向を逆にします。本線から右に分岐し、博物館の建物の方に向かいます。そして建物の手前で停車しました。

HL.303とART.300の全景です。
Workshopへ
上の写真の位置でHL.303は切り離されました。戻るART.300に乗せてもらいます。今度はWorkshopの横を行き過ぎてから戻る形で、Workshopのほうに移動しました。修復作業中の様子を見せていただけるようです。


Workshop
A.8861, A.8821


ともに2軸客車のA.8861(白いほう)とA.8821(緑のほう)です。修復中なので外板がはがされている、ということではなく、もともと夏季のオープン客車ということみたいです。
A.9963

2軸電動貨車のA.9963です。このときは修復作業真っ最中で、きれいな塗装が施されていました。鏡のように反射しており美しい限りです。
A.2121

車番不明

博物館の建物に戻る
Workshopを見学した後は、歩いて博物館の建物に戻りました。さきほどの続きの車両を解説していただきます。
A.9288

2軸の路面電車、A.9288です。
A.9515

これも2軸の路面電車、A.9515です。さきほどのA.9288よりも大型で近代的に見えますね。
架線修理の現場へ
ASVi museumは博物館やWorkshopといった拠点型の施設だけでなく、保存車両を運転するための路線も保有しています。博物館より南側は旧ベルギー国鉄線をメーターゲージに改軌して電化した路線で、Biesme-Sous-Thuin terminusまで全長は約3kmあまりです。博物館より北側は旧来からのメーターゲージの路面電車網で、Lobbes Entreville terminusまで、やはり3km程度です。
訪問日は本格的なシーズン前でこれらの路線の乗車体験は実施されておらず、シーズンに向けて整備中の時期でした。そんな中、残念なことに北側線で架線の盗難が発生したそうです。盗難防止のアラームもあるそうなのですが(セキュリティの都合上、詳しくは書きません)、被害が発生してしまったとのこと。架線修復のための工事列車がこれから運行されるということで、同乗させていただくことになりました。地道に保存鉄道を守るボランティアの方々の重要な任務です。
工事列車は3両編成です。車番は控えていなかったのですが、Webページで確認すると、A.51576(Ladder car: 高所作業車)+ A.7089(Flat wagon: これにトロリーを巻いたドラムが積載)+ ART.300(Diesel car: 朝も載った牽引車)という組成となります。すなわち、実際に高所で架線を張る作業を行なう貨車と、架線を積んだ貨車とを、ディーゼルカーが推進していく、という役割分担となります。
Ericさんはあとで迎えに来てくれるとのことで一旦別れ、私だけ工事列車の一員となりました。12:44、列車は出発します。


途中、併用軌道で現役の国鉄線のガードをくぐり、左へ90度曲がって国鉄線に沿う形となります。ただ、国鉄線がなめらかなカーブを描く一方でこちらは地形に忠実に勾配をたどり、彼我の差を見せつけられます。少し上ったところで停車、そのタイミングで「先頭のLadder carに乗り移っていいよ」ということだったので、遠慮せずに先頭車でかぶりつくことにしました。みなさん優しいです。Ladder carには資機材が所狭しと積んでありました。

坂を下り、橋を渡り、踏切を越え、坂を登っていきます。どこを切り取っても上質のジオラマになりそうな地方私鉄の光景です。景色を楽しんだと言いたいところですが、盗難現場に向かう道中ということで素直に楽しむわけにもいきません。



博物館から30分足らず、木立の中のカーブで列車は停車しました。トロリー線を雑に引っ張られたのか、腕金の曲がった架線柱が被害を物語っています。


架線の盗難なのでディーゼルカーでしかアプローチできませんし、新しいトロリー線を運搬したり、それを高所で作業したり、と、各保存車両が実用として設備保守のためにそれぞれの役割を果たしていることに思い至りました。見えないところのこのような地道な活動が、保存鉄道の運営を支えているのですね。

しばらくすると線路伝いにEricさんが迎えに来てくれました。補修作業は続くため、博物館にはEricさんのクルマで送ってもらいました。
三度、博物館に戻る
まだ見ていなかった数両を解説していただきました。
9888

これもまた、2軸の路面電車9888です。
SE.9974

ボギー車のSE.9974です。先の切妻な電車と比べると、ずいぶんスタイリッシュですね。
10480

これもボギー車の10480です。知識がなさ過ぎて9974との違いがよく分かりません。
ジオラマ展示
ベルギーのメーターゲージの風景と、ASVi museumの保存車両が再現されたジオラマ(HOm)もおいてありました。Ericさんの作品もあるそうです。模型好きの私としても、心奪われます。




最後に博物館の全景です。

おいとまするまで、実に3時間30分もASVi museumで過ごしました。Ericさんをはじめ博物館のみなさまには大変親切にしていただき、ベルギーに昔から続くメーターゲージ鉄道の魅力を知ることができました。併せて、これだけ規模の大きな保存鉄道を維持するための地道な活動には頭が下がる思いでした。最後に、私とASVi museumをつないでくださった模型仲間のHさんに感謝申し上げます。


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