旧東ドイツで広く使われた路面電車に、T57/B57があります。ゴータカー(Gothawagen)と総称される東ドイツの二軸車の代表的な形式で、全長10,900mm、ホイールベースは3,200mm、全幅は2,200mmというサイズ感です。西ドイツを走っていたデュワグ製の二軸車が角ばった外観なのに対し、丸みを帯びたT57/B57は、よりかわいらしい印象があります。外観が類似の形式としてREKO形もあり、Naumburgのように、現在では混用されている例もあるようです。
Berlin近郊のWoltersdorfを旅行した時に見かけたこれらの車両をとても愛らしく感じたこともあり、Nゲージの模型で再現しようと思います。まずは実車の状況を整理してみました。
実車の形態分類
ゴータカーの専門サイトによると、WoltersdorfのT57/B57の歴史は以下の通りだそうです。
2025年2月にGamma LF 10 AC BD型に置き換えられる前の状況です。T57(電動車)、B57(付随車)、REKO形を合わせて整理しました。車番の太字が現存車、細字は過去に廃車となっています。
車番 | 前身 | 製造年 | 転入年 | 形式 | 灯具 | 側面幕 |
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19 | Berlin 4534 | 1965 | 1998 | REKO ATw | 丸2灯 | – |
27 ←13 II | Schwerin 22 III | 1960 | 1977 | T57 | 角 | あり |
28 ←30 I | Dessau 42 II | 1959 | 1978 | T57 | 角 | あり |
29 ←23 | Schwerin 24 II | 1961 | 1977 | T57 | 丸 | あり |
30 ←28 I ←12 II | Schwerin 21 III | 1960 | 1977 | T57 | 角 | あり |
31 | Dresden 213 206 | 1959 | 1986 | T57 | 角 | なし |
32 ←38 | Dessau 44 II | 1960 | 1978 | T57 | 角 | なし |
33 | Dresden 201 602 | 1957 | 2008 | T57 | 角 | なし |
39 | Berlin 223 025-7 | 1969 | 1979 | REKO TZ69 | 丸 | あり |
部品取り | Dessau 43 II | 1959 | 1993 | T57 | 丸 | あり |
87 ←21 III | Schwerin 63 III | 1975 | 1978 | REKO BZ70 | 丸 | なし |
88 ←26 III | Schwerin 67 | 1961 | 1977 | B57 | 丸 | あり |
89 | Schwerin 64 II | 1960 | 1977 | B57 | 丸 | あり |
90 | Schwerin 65 II | 1960 | 1977 | B57 | 丸 | あり |
92 | Schwerin 66 | 1961 | 1977 | B57 | 丸 | あり |
19は事業用車なので例外として、27-33の7両が電動車、89-90の2両が付随車です。原型はテールライトが丸目で、正面窓の下辺が「へ」の字、ボディにもリブがあったものが、30, 89, 90以外はある時期に更新されたらしく、角目、正面窓の下辺がフラット、ボディのリブもなくなってすっきりしています。また、Dresdenから来た31と33は、3枚の側窓のうち両側2枚の上側が左右引き窓になっているという、出身による違いも見られます。
実車の写真
2022.09.16に訪問した時に撮影した実車の写真を幾つか紹介します。(ここに出てこない車両は、訪問時に私が見ることができなかったものです)
19
19号車はもとBerlinのREKO形です。”Arbeitstriebwagen 4508”でネット検索すると出てくる4508号車とは同一形態で(同一車両ではなさそうです)、Berlin時代から事業用車だったようです。乗降扉が片側にあるほか、中央部には荷物扉が見られます。


27
27号車はSchwerinからの譲渡車です。Schwerinからは5両(27, 29, 30, 89, 90)が譲渡されており、Woltersdorfの中で一大勢力となっています。正面の系統幕も電照式に改造されており、系統番号の「87」か、途中出庫の「E」が表示できるようになっています。


31
31はDresdenからの譲渡車ですが、もとを辿ると新製時はChemnitzとなります。側面窓の形態が27とは異なるほか、側面幕もありません。運転室上部にあるアンテナ?の取り付け位置も、31は車体中央寄りになっているなど、よくみると細かい差異がみられます。訪問時は、片側の正面に車番が入っていませんでした。


32
32号車はDessauからの譲渡車です。同じくDessauから来た28号車には側面幕が設けられているのに対し、32号車には側面幕がありません。もともと異なるのか後天的な改造なのかは分かりません。


89
付随車の89号車、訪問時はThälmannplatzの車庫でブルーシートに覆われており、直接その姿を見ることはできませんでした。

90
90号車は89号車と縦列で車庫に留置されていましたが、こちらはブルーシートに覆われることなく、外観をみることができました。長期間使われていない様子で、状態はよくないように見えました。連結運転が行われなくなって久しいのかも知れません。


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